アデノウイルス感染症

アデノウイルス感染症は、アデノウイルスによって引き起こされる感染症で、呼吸器系、眼、消化器系など様々な部位に影響を及ぼすことがあります。特に小児においては、急性呼吸器感染症として現れることが多く、学校や保育園など集団生活を送る場での発生が一般的です。

症状と診断

アデノウイルス感染症の症状は多様で、感染部位やウイルスの株によって異なります。主な症状には、発熱、喉の痛み、咳、鼻水、喘鳴などが含まれます。時には結膜炎や皮疹を伴うこともあります。特に小児では、呼吸困難や喘鳴を伴う重篤な状態に進行することがあります。

診断は、臨床症状と病歴に基づいて行われることが多いですが、確定診断にはウイルスの検出が必要です。抗原検査やPCR検査やウイルス培養によってアデノウイルスの存在を確認することができます。また、血液検査で抗体の存在を調べることもありますが、感染初期には感度が低いことがあります。

治療法

アデノウイルス感染症に対する特効薬は存在しませんが、症状に応じた対症療法が行われます。発熱や痛みには解熱剤や鎮痛剤が用いられ、呼吸困難には気管支拡張剤や吸入療法が行われることがあります。また、十分な水分補給や安静も重要です。

重症化を防ぐためには、早期に適切な治療を受けることが大切です。呼吸器感染症の場合は、入院が必要となることもあります。特に呼吸困難や高熱が続く場合には、専門医の診察を受けることが推奨されます。

予防と管理

アデノウイルス感染症の予防には、衛生管理が重要です。手洗いやアルコール消毒を徹底し、感染者との接触を避けることが基本です。また、症状がある場合は、他人との接触を控え、特に集団生活を送る場では注意が必要です。アデノウイルスは非常に感染力が強いため、日常的な予防策が感染拡大の防止に役立ちます。

受診すべき目安

アデノウイルス感染症が疑われる場合、以下の状況で医療機関を受診することが推奨されます。

  • 高熱が続く場合:
    特に3日以上続く高熱や、解熱剤が効かない場合。
  • 呼吸困難や喘鳴が見られる場合:
    呼吸が困難であったり、喘鳴(ゼーゼーとした呼吸音)が聞こえる場合。
  • 症状が急激に悪化する場合:
    咳や呼吸の症状が急激に悪化し、状態が重篤化する場合。
  • 重篤な合併症が懸念される場合:
    例えば、脱水症状や持病がある場合など、感染が重症化するリスクが高い場合。

アデノウイルス感染症は通常軽症で回復しますが、適切な診断と治療が重症化を防ぐ鍵となります。気になる症状が現れた場合には、速やかに当院までご相談ください。

おたふくかぜ(ムンプス)

ムンプス(Mumps)は、ムンプスウイルスによって引き起こされる感染症で、主に小児に発症しますが、成人にも感染することがあります。ムンプスは、耳下腺(唾液腺)の腫れを特徴とし、伝染力が強く、特に集団生活を送る場での発生が多いです。

症状と診断

ムンプスの主な症状は、耳下腺の腫れ(耳の下にある唾液腺の腫れ)です。この腫れは一般に片側または両側に現れ、痛みを伴うことがあります。また、発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感などの全身症状が見られることもあります。腫れが引くと、しばしば数日内に自然に回復しますが、ムンプスウイルスが他の臓器にも影響を及ぼすことがあります。

診断は、通常、臨床症状と病歴に基づいて行われます。
合併症などを伴う場合にはムンプスウイルスの検出が診断を確定するために行われます。おもに血液検査や唾液検査を用いて、ウイルス抗体の有無を確認しますが、発症初期には抗体価が上昇せず、検出するタイミングでは症状がひいていることもあります。

治療法

ムンプスに対する特効薬はなく、治療は対症療法が中心です。発熱や痛みには解熱剤や鎮痛剤が使用され、耳下腺の腫れには冷湿布や適切な休息が推奨されます。十分な水分補給と栄養摂取も重要で、腫れた唾液腺によって食事が困難になる場合は、柔らかい食べ物や流動食を摂取することが勧められます。

ムンプスは自然に回復することが多いですが、合併症がある場合には、追加の治療が必要となることがあります。合併症には、髄膜炎、精巣炎(男性の場合)、卵巣炎(女性の場合)、感音性難聴、膵炎などがあります。

予防と管理

ムンプスの予防には、ムンプスワクチンが非常に効果的です。ムンプスワクチンは通常、任意ワクチンの一部として接種されます。予防接種は、生後12ヶ月以上で初回接種を行い、4〜6歳で追加接種が推奨されます。ワクチン接種により、ムンプスの発症リスクを大幅に減少させることができます。

また、感染者との接触を避けることも重要です。感染者がいる場合は、集団生活を送る場での感染拡大を防ぐため、適切な衛生管理と隔離が推奨されます。

受診すべき目安

ムンプスが疑われる場合、以下の状況で医療機関を受診することが推奨されます。

  • 耳下腺の腫れが見られる場合:
    片側または両側の耳下腺が腫れ、痛みを伴う場合。
  • 発熱や全身症状が重篤な場合:
    発熱が続く、または頭痛、筋肉痛がひどくて生活に支障がある場合。
  • 合併症の兆候がある場合:
    髄膜炎や精巣炎、卵巣炎、膵炎、感音性難聴など、他の合併症の症状(頭痛や嘔気、下腹部痛、難聴)が見られる場合。
  • 症状が長引く場合:
    症状が長引いたり、状態が悪化する場合。

ムンプスは一般に軽度で回復することが多いですが、適切な診断と治療が合併症を防ぎ、快適な回復を促進します。気になる症状が現れた場合には、当院までご相談ください。

レンサ球菌感染症

レンサ球菌感染症は、主にストレプトコッカス・ピオジェネス(Streptococcus pyogenes)というグラム陽性球菌によって引き起こされる感染症です。この菌は、溶連菌(溶血性連鎖球菌)としても知られ、咽頭炎から皮膚感染症、さらには重篤な全身感染に至るまで、さまざまな感染症を引き起こします。

症状と診断

レンサ球菌感染症は、感染部位によって異なる症状を呈します。最も一般的な症状は、咽頭炎(いわゆる「喉の痛み」)で、急激な発熱、喉の痛み、嚥下困難、扁桃腺の腫れ、時には白い膿が見られることがあります。咽頭炎の他に、皮膚においては、蜂窩織炎(皮膚の深部に感染が及ぶ疾患)や丹毒(赤く腫れる皮膚感染)が見られることがあります。

さらに、レンサ球菌はリウマチ熱や急性糸球体腎炎など、合併症を引き起こすことがあります。リウマチ熱は心臓や関節に影響を与え、急性糸球体腎炎は腎臓に炎症を引き起こします。

診断は、臨床症状と病歴に基づいて行われることが多いですが、確定診断には喉の拭い取り検査や迅速抗原検査、または咽頭からの培養が行われます。血液検査や尿検査で、リウマチ熱や糸球体腎炎の合併症の有無を確認することもあります。

治療法

レンサ球菌感染症の治療には、抗生物質が使用されます。ペニシリンやアモキシシリンなどが第一選択薬として用いられ、これにより菌の除去と症状の改善が期待できます。抗生物質は、症状の発現から48時間以内に開始することで、合併症のリスクを減少させることができます。

皮膚感染症の場合には、抗生物質に加えて、適切な創傷処置や清潔保持が重要です。リウマチ熱や急性糸球体腎炎が疑われる場合には、さらに専門的な治療や管理が必要となります。

予防と管理

レンサ球菌感染症の予防には、衛生管理が重要です。手洗いや咳エチケットを徹底し、感染者との密接な接触を避けることが基本です。また、感染者が抗生物質で治療を受けている場合でも、症状が治まるまでは他人との接触を控えることが推奨されます。

受診すべき目安

レンサ球菌感染症が疑われる場合、以下の状況で医療機関を受診することが推奨されます。

  • 喉の痛みや発熱が激しい場合。
  • 皮膚に発疹や腫れなど状態が悪化する場合。
  • リウマチ熱や急性糸球体腎炎の兆候がある場合:関節炎症状、胸痛、尿の変化(血尿やむくみなど)が見られる場合。
    →このような経過にならないように溶連菌感染症の診断治療をされた患者様には約1ヶ月後の尿検査を施行しています。
  • 症状が長引く場合:抗生物質治療を行っても症状が改善しない場合や、状態が悪化する場合。

レンサ球菌感染症は、早期の適切な治療により合併症を防ぎ、回復を早めることが可能です。気になる症状が現れた場合には、当院までご相談ください。

手足口病

手足口病(Hand, Foot, and Mouth Disease)は、エンテロウイルスによって引き起こされる軽度のウイルス性疾患で、主に小児に発症することが多いです。特に夏から秋にかけて流行し、主に保育園や学校などで集団感染が見られます。

症状と診断

初期症状は、発熱や全身の倦怠感、食欲不振などの風邪に似た症状から始まります。その後、手のひらや足の裏、口の中に特徴的な小さな水疱性の発疹が現れます。口の中には口内炎や白い斑点が見られることが多く、粘膜への刺激が強くなるせいで食事が困難になることがあります。発疹は一般に数日以内にかさぶたになり、自然に回復します。

診断は、臨床的な症状と病歴に基づいて行われます。
重症化した際にはPCR検査やウイルス培養によってエンテロウイルスの検出により確定診断が行われることがあります。

治療法

手足口病は通常軽度の疾患であり、特効薬はありません。治療は対症療法が中心で、主に症状の緩和を目的とします。発熱や痛みには解熱剤や鎮痛剤が使用され、口内炎の痛みには、口腔内の局所麻酔剤や口内の痛みを和らげるための飲み薬が処方されることがあります。

十分な水分補給が重要で、特に口内炎によって食事が困難になる場合は、塩分摂取を意識し、経口補水液やスープなどの流動食を摂取することが推奨されます。感染が広がるのを防ぐためには、発疹の部位を清潔に保ち、他の人との接触を避けることが大切です。

予防と管理

手足口病の予防には、衛生管理が非常に重要です。手洗いを徹底し、感染者との接触を避けることが基本です。また、発疹がある場合は、タオルや食器などの共用を控え、適切な衛生管理を行うことが感染拡大の防止に役立ちます。保育園や学校などでも感染拡大を防ぐための措置を講じることが必要です。

受診すべき目安

手足口病が疑われる場合、以下の状況で医療機関を受診することが推奨されます。

  • 高熱が続く場合:特に3日以上続く高熱や、解熱剤が効かない場合。
  • 口内炎や発疹が重症化する場合:口内炎がひどくて食事が困難になる場合や、発疹が広がる場合。
  • 脱水症状が見られる場合:水分摂取が困難で脱水症状(口の渇き、尿量の減少、皮膚の乾燥など)が見られる場合。
  • 症状が持続する場合:症状が長引いたり、状態が悪化する場合。

手足口病は通常は軽度で自然に回復しますが、症状の管理と適切な対応が重要です。気になる症状が見られる場合は、当院までご相談ください。